嫌いだけれど、いなければ困るこの関係
ある心理カウンセラーが面白い話を聞かせてくれました。
一人の男性が、「妻との関係がうまくいかない」 と言って相談にやってきたそうです。
話を聞くと、あんなケチな女はいない。
あんなにいばっている女はいない。
あんな怖い女はいない。
と、とにかく奥さんの悪口をまくし立てます。
そして、「あんな女は大嫌いだ」 と訴えるのです。
そのカウンセラーはさんざん人の悪口を聞かされて、
いいかげんウンザリしていたのでしょう。
「それなら、別れればいいじゃないですか」 と男性に言いました。
すると男性は、非常に困った顔になって、
「大嫌いだけど、別れるわけにはいかないんだ。嫌いだけど、愛しているんだから」
と言ったというのです。
嫌いだけど別れられない、嫌いだけど愛している…これはいっけん正反対のこと、
まるで矛盾していることを言っているようですが、男女の愛というものの
本質をついた言葉ではないかと思います。
恋愛の初期にある人はそうではないかもしれませんが、
一般的には付き合いが長くなっていくと、相手の欠点やアラも見えてきます。
「あんな、いくじのない人だとは思わなかった。いやになっちゃう」
「どうして、あんなにセコイのかしら。男らしくないわ」
と友人に彼のグチを言ったことは、あなたにもあるのではないでしょうか。
しかし 「いやになっちゃう」 「男らしくない」 ことがわかったからといって、
それで彼と別れることができますか。
「もう愛していない」 と言うことができますか。
・・・できませんよね。
「いやになっちゃう」 「男らしくない」 にもかかわらず、
あなたは彼のことを愛しているからです。
言い換えるなら、「嫌いだけど別れられない」 「嫌いだけど愛している」 という状態は、
それだけあなたと彼の愛が長く続いている、愛が深まっている状態にある
証拠だともいえるのではないでしょうか。
愛の深まりがそれほどない二人であれば、「嫌い」 なところが
ちょっとでも見つかれば、すぐに別れてしまうに違いありません。
では、「嫌いだけど別れられない」 「嫌いだけど愛している」 と思うのは、なぜでしょうか。
一言で言えば、それは相手を 「必要としている」 からなんです。
若い人たちは、よく親の悪口を言います。
「あんなガンコな父親はいないよ。母親も融通がきかないし」 と。
しかし両親がいなくなっては困るのです。
親がいなければ住む家もなくなりますし、自分を守ってくれる人もいません。
ガンコだ、融通がきかない、と言いながら、実は両親を必要としているのですね。
職場の上司の悪口を言う人もいます。
「ああ、うちの課長には、本当に能力がないね」
しかし、そんなことを言いながら、上司がいなくなってしまうと
明日から仕事をどう進めていいかわからない。
だから嫌いな上司であろうと、いなくなっては困ります。
その上司を必要としているのです。
男女の関係も同じなんです。
ああだ、こうだとお互いのことを悪く言いながら、彼が、彼女がいなくなれば寂しくてしょうがない。
生きていく喜びがなくなってしまう。
幸せに生きていくためには、やはり必要とする相手なのです。
言い換えてみれば、愛するとはある意味では、いかにその人を
必要としているかということではないかと思います。
必要とし、必要とされることが、愛なのです。
わたしたちは一人では生きていけません。
好きな人がそばにいてくれることが、絶対に必要なのです。
話は変わりますが、最近、「どうすれば長生きできるか」 という研究が盛んに行われています。
しっかり野菜を食べること、運動をすること、生きがいを持つこと。
そして、もうひとつ、長生きするためには、とても大切な要素があると言います。
それは、「好きな人がいること」 なんです。
愛は生命力を旺盛にする力があるのでしょう。
愛は、生きる原動力になるものなんですよ。
◆まとめ
愛は、生きる原動力にもなるもの。
彼は幸福に生きるためにも、あなたを必要としている。